クラウド環境を強化するAzureセキュリティの9つのベストプラクティス

Wiz エキスパートチーム
Azureセキュリティの重要ポイント
  • Azureのshared responsibility model(責任共有モデル)では、Microsoftがインフラを保護し、利用者側がワークロード、データ、アクセス制御を保護します。

  • 9つの中核プラクティス(トレーニング、セキュリティ態勢管理、ネイティブセキュリティ機能、IAM、JITアクセス、暗号化、ネットワークセキュリティ、定期監査、多層防御)により、攻撃対象領域を体系的に縮小します。

  • 最大のリスクは設定ミス(misconfiguration)です。1つの誤ったポリシーによって機密データが露出する可能性があるため、継続的な監視が不可欠です。

  • defense-in-depth(多層防御)は致命的な侵害の可能性を下げ、影響を抑えます。複数のセキュリティ制御を重ねることで、たとえ1つの制御が破られても攻撃を遮断できます。

Azureの保護には、複雑に絡み合うIAMロール、ネットワークセキュリティグループ、PaaS構成、そして絶えず進化するサービスへの対応が求められます。

クラウドの利用範囲が広がるほど、リスクも増大します。設定ミス、過剰権限のアイデンティティ、露出したワークロード、シャドーAIサービスが、サブスクリプションやリージョンをまたいで静かに攻撃対象領域を拡大することがあります。

Azureを安全に運用するには、組み込みの制御を有効化するだけでは不十分です。継続的な可視化、コンテキストを踏まえたリスクの優先順位付け、そしてクラウドのスピードに合わせて拡張できる戦略が必要です。

Azure Security Best Practices [Cheat Sheet]

This cheat sheet explores detailed aspects of Azure best practices, from role-based access control (RBAC) to cloud security posture management, that you can adapt to secure your Azure subscriptions.

Azureセキュリティと責任共有モデルの基礎

Azureのセキュリティは後付けで対応するものではありません。最初のコードコミットからデプロイまで、開発の各段階でセキュリティ制御を組み込み、継続的に適用することが重要です。Infrastructure as Code(IaC)を活用することで、ソフトウェアサプライチェーンの保護を含め、Azure環境にセキュリティを直接統合できます。

Azureを保護するうえで重要なのは、shared responsibility model(責任共有モデル)における責任範囲を理解することです。Azureには組み込みのセキュリティ機能がありますが、利用しているデプロイモデルに応じて、ワークロードを保護する責任は利用者側にもあります。

例えば、責任範囲は以下のように異なります。

  • IaaS 

OSセキュリティ、ネットワークセキュリティ、アプリケーションセキュリティ、アイデンティティ保護を利用者側で管理します。

  • PaaS 

Azureがインフラのセキュリティを担い、利用者側はアプリケーションとデータ保護に注力します。Azureセキュリティの中核をなす主要なコントロールプレーンは、次の要素で構成されます。

  • Identity and access management(IAM) 

どのユーザーやサービスがリソースへアクセスできるか、また何を実行できるかを制御します。

  • ネットワークセキュリティ 

リソース間およびインターネットとの通信を制御します。

  • データ保護 

保存時・転送時の暗号化によって機密情報を保護します。

  • ログ記録と監視 

アクティビティを追跡し、異常をリアルタイムで検出します。

  • ガバナンスとコンプライアンス 

ポリシーを適用し、規制要件への準拠を維持します。

Azure landing zones、management groups、さらにAzure Security BenchmarkCloud Adoption Frameworkなどのフレームワークは、ワークロードをデプロイする前に必要となる組織構造やポリシーの基盤を整備するために役立ちます。

また、セキュリティ対策では、アクセス制御の運用、多層防御、侵入検知、データ保護、コンプライアンスの継続的な管理も欠かせません。これらをAzureのベストプラクティスに沿って運用することで、脆弱性が深刻な脅威へ発展する前に対処しやすくなります。

最も重要なAzureセキュリティのベストプラクティス

Azure環境を安全に運用するには、体系的なセキュリティガイドラインを整備することが重要です。まずはアイデンティティ管理、ログ監視、ネットワークセキュリティを優先し、その後にデータ保護や運用プロセスの強化へ進めることを推奨します。

以下では、すぐに実践できる具体的なAzureセキュリティのベストプラクティスを紹介します。

1. Azure PolicyとDefender for Cloudでセキュリティ態勢を定義する

クラウド環境では新しい攻撃手法が継続的に登場するため、Azureのセキュリティ態勢(security posture)を維持することが重要です。Azureには、そのためのAzure PolicyやMicrosoft Defender for Cloudなどの専用ツールが用意されています。

また、Azure Blueprintsは2026年7月に廃止予定となっており、長期的なコンプライアンスを維持するために、ガバナンス運用はAzure PolicyとDeployment Stacksへ移行しつつあります。

Azure Policyでは、環境全体に対してセキュリティルールを定義・適用できます。組み込みポリシーを利用することで、非準拠のリソース構成がデプロイされる前にブロックできます。

さらに、management groupsにポリシーイニシアチブを割り当てることで、複数のサブスクリプションに一貫したガードレールを適用できます。Infrastructure as Code(IaC)を運用しているチームでは、Deployment StacksをAzure Policyと組み合わせることで、準拠したリソース構成をデプロイ時に強制できます。

Defender for Cloudは、Microsoft Cloud Security Benchmark(MCSB)を通じて継続的な可視化を提供します。Secure Score機能では、サブスクリプション全体のセキュリティ検出結果を単一スコアに集約し、リスクを俯瞰しながら修復対応(remediation)の優先順位付けを行えます。

さらに、Defender CSPMの有償プランでは、attack path分析、リスクの優先順位付け、AI security posture managementなどにも対応しており、高度な可視化や分析が必要な組織に適しています。

セキュリティ態勢が時間とともに変化しないよう、以下のプロセスを整備しましょう。

推奨プロセス内容
Azure Policyの適用「deny」や「deploy if not exists」を活用し、設定ミスのあるリソースが本番環境へ展開されることを防止します
Azure Monitorによる監視リソース構成がセキュリティベースラインから逸脱した際に、チームへ通知するアラートを設定します
定期レビューの実施Defender for Cloudの推奨事項を週次で確認し、Secure Scoreへの影響が大きい項目から優先的に対応します
remediation運用の明確化remediationワークフローを文書化し、セキュリティ課題ごとの担当者や責任範囲を明確にします
プロのヒント

Wizでは、このプロセスをマルチクラウド環境全体へ拡張できます。Azure、AWS、GCPなどの検出結果を単一の優先度付きリスクビューに相関分析し、チームが複数ツールを切り替えることなく、全体のリスクへ集中できるよう支援します。

2. Azureのネイティブセキュリティ機能を統合する

まずは、Azureに組み込まれているセキュリティ機能を活用し、包括的なセキュリティ戦略を構築します。これらの機能は攻撃に対する第一防衛線となり、初期段階からセキュリティを強化できます。

Azureには、要件に応じて調整できる組み込みのセキュリティ機能が用意されています。代表的な機能は以下のとおりです。

セキュリティ機能主な用途
Microsoft Defender for Cloud脅威検知
Azure Firewallネットワークセキュリティ
Microsoft Entra IDIAM(IDおよびアクセス管理)

これらの機能を適切にチューニングすることで、防御を強化し、環境全体の保護につなげられます。あわせて、基準となるセキュリティ態勢(security posture)を確立することで、ネットワーク侵入や既知の脆弱性悪用といった一般的な攻撃にも備えやすくなります。

初期導入フェーズでは、既存のファイアウォール機能をAzureへ拡張し、移行プロセスを簡素化する方法も有効です。

例えば、ポータブルライセンスを利用できる場合は、オンプレミスのネットワーク機器を仮想アプライアンスとしてAzureへ移行し、その後、必要に応じてクラウドネイティブまたは専用ソリューションへ段階的に移行できます。

また、アプリケーション要件をAzureのセキュリティ機能へ適切にマッピングし、shared responsibility model(責任共有モデル)における利用者側の責任を果たすことも重要です。

以下の手順で進めましょう。

推奨プロセス内容
Defender for Cloudの有効化Microsoft Defender for Cloudを全サブスクリプションで有効化し、メール通知を設定します
Firewallルールの見直しAzure Firewallのルールを四半期ごとに見直し、不要なアクセスを削除します
Entra ID権限の監査Entra IDの権限を月次で監査し、権限の肥大化が発生していないか確認します
プロのヒント

Wizでは、Microsoft Defender for Cloud、Azure Firewall、Entra IDなどのAzureネイティブセキュリティ機能を横断的に可視化し、設定ミスや過剰権限、意図しない外部公開設定を継続的に検出できます。Azure環境全体のセキュリティ状況も一元管理が可能です。

3. 条件付きアクセスとRBACでEntra IDを強化する

Access controls available within Microsoft Entra admin center (Source: Microsoft Learn)

IAM(IDおよびアクセス管理)は、クラウドセキュリティの基盤です。ここが弱いと、攻撃者に管理者資格情報を奪取され、環境全体を掌握されるリスクがあります。

Microsoft Entra IDをrole-based access control(RBAC)と組み合わせることで、Azureリソースへのアクセス権限を細かく制御できます。権限管理では、least privilege(最小権限)の原則とzero trustの考え方を徹底することが重要です。

これらのアプローチにより、特定リソースに対する操作だけを許可でき、仮に資格情報が侵害された場合でも、広範囲へのlateral movement(横方向の移動)を防ぎやすくなります。

また、multi-factor authentication(MFA)を導入することで、防御レイヤーを追加できます。さらに、just-in-time(JIT)アクセスや、contextを考慮したアクセス制御を組み合わせることで、より強固なアクセス管理を実現できます。例えば、特定のタスクに限って一定時間のみ管理者権限を付与し、作業完了後に自動的に失効させる運用が有効です。

以下の対策を実施しましょう。

推奨プロセス内容
アクセスレビューの実施恒常的な管理者権限を持つアカウントを特定し、不要な権限を削除します
MFAの強制AzureリソースへアクセスするすべてのユーザーにMFAを適用します
PIMの適用本番環境への書き込み権限を持つすべてのロールに、PIM(privileged identity management)を適用します
プロのヒント

Wizでは、Entra IDやクラウド権限を横断的に可視化し、過剰権限アカウントや不要な管理者アクセスを継続的に検出できます。アクセス権限とリソースの公開状況を関連付けて分析することで、重大なリスクにつながる権限構成も特定しやすくなります。

4. VMのJITアクセスを有効化する

仮想マシン(VM)をインターネットへ常時公開したままにすると、攻撃者によるポートスキャンや不正アクセスのリスクが高まります。JIT(Just-In-Time)アクセスを利用することで、承認されたリクエストに応じて一定時間のみアクセスを許可でき、リスク低減につながります。

JITアクセスでは、ポートを常時開放する代わりに、既定では閉じた状態を維持し、必要なタイミングのみ一時的に開放します。これにより、ブルートフォース攻撃や不正なリモートアクセスへの露出を最小限に抑えられます。

また、PIM(Privileged Identity Management)を利用したJIT実装も有効です。時間制限や許可IPアドレスなどの条件付きでアクセス申請を行い、管理者が必要なリクエストのみを承認することで、VMアクセスをより厳密に制御できます。

Microsoft Defender for CloudでJITを有効化すると、必要なタイミングに限定してリソースアクセスを許可できます。すべてのアクセスリクエストをログとして記録できるため、アクセスパターンの追跡や監査にも活用が可能です。

JITアクセスを適切に運用するには、以下のプロセスを整備します。

推奨プロセス内容
JIT VM accessの有効化インターネットへ公開されているすべてのVMで、JIT VM accessを有効化します
セッション時間の制限最大セッション時間を4時間以下に設定し、不要な長時間アクセスを防止します
承認フローの整備本番VMへのアクセスでは、上長承認を必須とする承認フローを構築します
Azure Vulnerability Management Best Practices [Cheat Sheet]

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プロのヒント

Wizでは、インターネットへ公開されているVMや過剰に開放されたポートを継続的に可視化し、JITアクセスが適用されていない高リスクVMや、意図しない外部公開設定も特定が可能です。

5. Azure Key VaultとManaged HSMsでキーを管理する

Azureでは暗号化の利用が前提となりますが、実際の安全性は暗号鍵の管理方法に大きく左右されます。弱いキーや不適切な運用によって、強力な暗号化でも十分な効果を発揮できなくなる可能性があります。そのため、Azure Key VaultとManaged HSMは重要なセキュリティ要素です。

Azure Key Vaultでは、暗号鍵、シークレット、証明書を一元管理できます。キーをKey Vaultへ保管し、アプリケーションコードや設定ファイルへ直接埋め込まず、実行時に参照することで、シークレットのハードコード化を防止できます。

より高い保証レベルが求められるワークロードでは、Managed HSMの利用も有効です。FIPS 140-3 Level 3準拠のシングルテナントHSMプールを利用でき、鍵素材を厳密に制御できます。

効果的なキー管理には、キーのローテーションとアクセス制御の運用が欠かせません。

以下のプラクティスを実施し、セキュリティ態勢を強化します。

推奨プロセス内容
キーの定期ローテーションカスタマー管理キーを定期的にローテーションし、各サイクルを文書化します。90日ごとの更新をベースラインとするケースが一般的です
最小権限アクセスの適用Key VaultのアクセスポリシーまたはAzure RBACを利用し、許可されたアイデンティティのみがキーへアクセスできる状態を維持します
purge protectionの有効化偶発的または悪意ある削除に備え、Key Vaultでpurge protectionを有効化します。なお、soft-deleteは既定で有効ですが、purge protectionは手動設定が必要です
アラートの構成暗号化の無効化や異常なキーアクセスを検知できるよう、監視アラートを設定します
プロのヒント

Wizでは、Key Vaultのアクセス制御不足や、customer-managed keysが必要な環境でplatform-managed keysが使用されている構成など、キー管理に関する設定ミスを継続的に可視化できます。リスクにつながる構成ギャップも早期の特定が可能です。

6. Azure NSGsとASGsでトラフィックをセグメント化する

ネットワーク保護は、データ保護と同じくらい重要です。適切な制御がない場合、攻撃者はクラウド環境内でlateral movement(横方向の移動)を行い、外部公開されたリソースへアクセスする可能性があります。

ネットワークセキュリティグループ(NSG)とアプリケーションセキュリティグループ(ASG)は、その対策として重要な役割を担います。NSGはファイアウォールのように、定義済みルールに基づいて通信を許可または拒否します。一方、ASGはアプリケーション単位でセキュリティを管理し、アプリケーション間の通信制御を容易にします。

これらを組み合わせることで、許可された通信のみを通過させ、不正アクセスのリスクを抑えながら運用効率が維持できるのです。

NSGでは、VM、サブネット、そのほかのクラウドリソースに対するインバウンド/アウトバウンド通信の制御が可能です。VMごとに個別設定を行う代わりに、共通ルールを適用することで、ヒューマンエラーの削減や運用効率向上につながります。

ASGでは、同じ役割を持つVMをグループ化できるため、大規模環境でも一貫したセキュリティポリシーを適用しやすくなります。

また、これらのセキュリティグループによって、アプリケーションやデータセンター周辺に明確な境界設定が可能です。Microsoft Entra IDのようなアイデンティティベースのアクセス制御と組み合わせることで、重要システムへアクセスできるユーザーやサービスも限定できます。

ネットワークセキュリティを強化するには、以下のプロセスを整備します。

推奨プロセス内容
NSGルールの見直し過度に緩い「Allow Any」ルールをレビューし、不要な許可設定を削除します
ASGによるグルーピングASGを利用して機能別にリソースをグループ化し、ルール管理を簡素化します
変更管理プロセスの導入NSG変更時にピアレビューを必須化し、設定ミスの発生を防止します
プロのヒント

Wizでは、NSGやASGの設定を継続的に可視化し、過剰に許可された通信ルールや不要なインターネット公開設定の特定が可能です。リソース間の接続関係も分析できるため、攻撃経路につながる設定ミスの把握にも役立ちます。

Network security group filtering (Source: Microsoft Learn)

7. Microsoft SentinelとLog Analyticsで脅威をハンティングする

セキュリティ対策は、一度設定して終わりではありません。継続的な監査と監視を行わなければ、脆弱性や設定ミスを見逃し、Azure環境が危険な状態のまま放置される可能性があります。

定期監査を実施することで、設定ミス、不正アクセス、潜在的な脅威を深刻化する前に検知しやすくなります。特に重要なのは、ユーザーアクセス、ネットワークアクティビティ、データ保護といった領域を重点的に確認することです。

DevOps環境では、CI/CD pipelines、コンテナ設定、コードリポジトリなどにセキュリティギャップが発生しやすいため、定期監査が欠かせません。監査の自動化やリアルタイム監視を組み合わせることで、早期検知やインシデント防止につながります。

また、重要リソースへアクセス権を持つアカウントを定期的に見直し、必要最小限の権限だけを維持することも重要です。Azureの監視ツールでアクセス状況を追跡し、高リスクアカウントの不要な権限を削除します。

Azure Key Vaultの資格情報についても、定期的なローテーションを実施し、情報漏えいリスクを抑える必要があります。

Audit findings in Microsoft Sentinel by way of Wiz

Azureネットワークをレビューする際は、ファイアウォールルールやNSGを確認し、許可された通信のみが通過する状態を維持します。1つの設定ミスが攻撃者の侵入口となり、環境全体へ影響を及ぼすケースもあります。

Azure Monitor、Log Analytics、Microsoft Sentinelなどの監視ツールを活用することで、セキュリティ監査やリアルタイム脅威検知を強化できます。これらのツールは、ユーザーアクティビティの追跡、異常検知、潜在的な脆弱性の把握にも役立ちます。

脅威検知と監査を強化するには、以下のプロセスを整備します。

推奨プロセス内容
自動セキュリティスキャンの実施一般的な設定ミスを確認する月次スキャンを実施し、リスクを早期に検出します
アクセスログのレビュー想定外の地域からのログインなど、不審なアクセスパターンを定期的に確認します
監査ログの維持セキュリティ監査ログを保持し、検出した課題と対応状況を継続的に追跡します
プロのヒント

Wizでは、Azure MonitorやMicrosoft Sentinelの検出結果を横断的に可視化し、設定ミス、過剰権限、不審なアクセス経路を関連付けて分析可能です。攻撃経路につながるリスクも優先度付きで把握できます。

8. 多層防御(Defense in Depth)のセキュリティモデルを展開する

多層防御(Defense in Depth)は、アプリケーション、OS、ネットワーク、アクセス制御など、複数レイヤーにわたってセキュリティ対策を実装するアプローチです。

多層防御を導入することで、単一障害点の発生を防ぎやすくなります。ある防御層が突破された場合でも、別レイヤーで攻撃を遮断できるため、被害拡大の抑制につながります。

Azure環境の各レイヤーを強化するには、以下のガイドラインを推奨します。

セキュリティレイヤー内容
ネットワークセキュリティAzure Firewall、ネットワークセキュリティグループ(NSG)、DDoS保護などを組み合わせ、多層的に保護します
データレイヤー暗号化や証明書管理を活用し、保存時・転送時のデータを保護します
アプリケーションレイヤーコードレビューやセキュリティテストを実施し、API管理やWAFも含めて対策します
脅威検知と防御Microsoft Defender for Cloud、Defender for Identity、Microsoft Sentinelなどを活用し、脅威を継続的に検知・遮断します

侵害を検知した場合は、速やかにインシデント対応プロセスを実行する必要があります。脅威へのremediation後は、Azure Backup、Azure Site Recovery、Azure Archive Storage などを 利用し、アプリケーションやデータの復旧を行います。

さらに、多層防御を継続的に強化するには、以下の運用も重要です。

推奨プロセス内容
セキュリティ制御のマッピング現在のセキュリティ制御を各防御レイヤーへマッピングし、対策ギャップを特定します
インシデント対応訓練インシデント対応計画を6か月ごとに机上演習でテストし、運用手順を見直します
バックアップポリシーの整備重要ワークロードにAzure Backupを構成し、復旧目標に沿った保持ポリシーを設定します
プロのヒント

Wizでは、クラウド環境全体の設定、アイデンティティ、ネットワーク接続、脆弱性情報を関連付けて可視化し、攻撃経路につながるリスクの特定が可能です。単一の設定ミスだけでなく、多層防御のどこにギャップがあるかも把握しやすくなります。

Layers of defense in depth (Source: TechTarget)

9. Azure Cloud Adoption Frameworkでチームの整合を取る

オンプレミス環境とは異なり、Azureはshared responsibility model(責任共有モデル)に基づいて運用されます。Microsoftが基盤インフラを保護し、利用者側はアイデンティティ、データ、アプリケーションセキュリティを管理します。

また、IaaS、PaaS、SaaSのどのワークロードを運用しているかによって責任範囲も変化します。そのため、Azureリソースに関わるすべてのチームが、自分たちの責任範囲を正しく理解しておく必要があります。

Azure Cloud Adoption Framework(CAF)のSecure Methodologyは、その整合を取るための構造化されたアプローチです。ランディングゾーン設計から継続運用まで、クラウド導入の各フェーズへセキュリティを組み込み、継続的なセキュリティ運用として実践します。

CAFを活用することで、zero trustの考え方を具体的な運用へ落とし込みやすくなります。例えば、least privilege access(最小権限アクセス)の適用、構成強化、CI/CDパイプラインへのセキュリティチェック統合などが代表例です。

Microsoft Learnでは、Azure向けのロール別トレーニングや認定資格も提供されています。一般的なセキュリティ教育にとどまらず、Azure運用に必要なスキルの体系的な習得が可能です。

さらに、Azureのサンドボックス環境を用意することで、本番ワークロードへ影響を与えずに設定やセキュリティ制御を検証できます。

CAFを実運用へ落とし込むには、以下のプロセスを推奨します。

Azure DevOps Best Practices Cheat Sheet

Learn why Azure DevOps pipelines are high-value targets and what attackers are actually after.

推奨プロセス内容
CAF RAMPモデルによる評価CAF RAMPモデル(Ready / Administer / Monitor / Protect)を利用し、スキルギャップや必要な育成領域を特定します
Azure認定資格の活用Azure AdministratorやAzure Security Engineerなど、運用ロールに応じた認定資格を割り当てます
Runbookの整備一般的なAzure設定ミスのシナリオをRunbook化し、Defender for Cloudの推奨事項をベースラインとして活用します
セキュリティチャンピオン制度の導入各チームにセキュリティチャンピオンを配置し、構成ドリフトの早期検知やSecure Methodologyの定着を推進します
プロのヒント

Wizでは、Azure環境全体の設定、権限、ネットワーク構成を継続的に可視化し、チーム間で統一されたセキュリティ基準を維持しやすくなります。構成ドリフトや設定ミスも継続的に検出でき、CAFに沿った運用管理の強化につながります。

どのAzureセキュリティ課題に備えるべきか

強固なセキュリティ対策を導入していても、攻撃者は継続的に弱点を探しています。設定ミスや運用上の見落としによって、クラウド環境が危険にさらされるケースも少なくありません。主要な脅威を理解し、事前に対策を講じることが重要です。

主要なAzureセキュリティ課題と、それぞれに対応するベストプラクティスを以下にまとめます。

セキュリティ課題リスク内容対応策
設定ミス(Misconfiguration)誤ったセキュリティポリシーによって、機密データや重要リソースが外部へ公開される可能性がありますセキュリティ態勢管理、定期監査、多層防御
不正アクセスIAM制御が不十分な場合、攻撃者による侵入リスクが高まりますIAM、JITアクセス
データ露出弱い暗号化や公開ストレージ設定によって、機密データが漏えいする可能性があります暗号化、ネットワークセキュリティ
内部脅威過剰権限や不適切なアクセスによって、内部ユーザーが情報漏えいや破壊行為を引き起こすケースがありますIAM、定期監査
安全でないAPI認証やセキュリティ対策が不十分なAPIは、攻撃対象になりやすくなりますネイティブセキュリティ機能、ネットワークセキュリティ、多層防御
コンプライアンスと規制リスク業界ごとの規制要件へ準拠できない場合、監査や法規制上の問題につながりますセキュリティ態勢管理、定期監査
高度な持続的脅威(APT)高度な攻撃者が長期間にわたり潜伏し、継続的な侵害活動を行うケースがありますトレーニング、ネイティブセキュリティ機能、多層防御
DDoS攻撃大量トラフィックによってサービス停止やパフォーマンス低下を引き起こしますネイティブセキュリティ機能、ネットワークセキュリティ、多層防御
プロのヒント

Wizでは、設定ミス、過剰権限、外部公開リソース、脆弱性情報を関連付けて分析し、攻撃経路につながるリスクを優先度付きで可視化できます。Azure環境全体のリスク状況を継続的に把握しやすくなります。

実例:38TBのデータが気付かないうちに露出

2023年、Wiz Researchは、MicrosoftのAI研究チームによって意図せず公開されていた大規模なデータ露出事案を発見しました。GitHub上でオープンソースのトレーニングデータを共有する過程で、38TBものプライベートデータが外部からアクセス可能な状態になっていました。

原因は、過度に広い権限を持つAzure Shared Access Signature(SAS)トークンの設定ミスです。本来は特定ファイルだけを共有する想定だったものの、実際にはストレージアカウント全体へのアクセスが許可されていました。

露出していたデータには、パスワード、シークレットキー、さらに359名分のMicrosoft Teams内部メッセージ30,000件超を含むディスクバックアップなどが含まれていました。

Exposed containers under the “robustnessws4285631339” storage account

また、この設定ミスのあるトークンには読み取り専用制限がなく、フルコントロール権限が付与されていました。そのため、攻撃者がファイルを削除・改ざんしたり、研究者がダウンロードするAIモデルへ悪意あるコードを混入させたりできる状態でした。

この事例は、Azure Storageにおける単一の設定ミスが、大規模な情報漏えいにつながる可能性を示しています。適切なアクセス制御と定期監査の重要性を理解するうえでも、代表的なケースといえます。

WizがAzureセキュリティのベストプラクティス実装を支援する方法

ここまで、Azure環境を保護するための9つのセキュリティベストプラクティスを紹介してきました。しかし、変化の速いクラウド環境では、継続的な監視と運用を支援するツールも欠かせません。適切なプラットフォームを活用することで、Azureワークロードの保護と運用負荷軽減を両立しやすくなります。

Wizでは、クラウド環境全体の可視化を通じてAzureセキュリティ運用を簡素化します。agentlessかつ100% APIベースのアプローチにより、VM、コンテナ、サーバーレス、PaaSなど、さまざまなワークロードを数分でスキャン可能です。追加エージェントの導入やパフォーマンスへの影響も抑えられます。

また、9つのセキュリティベストプラクティスを、スケーラブルかつ継続的な運用へ落とし込める点も特徴です。

Wizでは、以下の機能によってAzureセキュリティ運用を支援します。

機能内容
クラウド環境全体の可視化Azure環境を継続的にスキャンし、リソース構成、脆弱性、設定ミスをリアルタイムに把握できます。セキュリティ態勢管理や定期監査の効率化にも役立ちます
リスクベースの優先順位付けワークロード、データの機密性、ネットワーク露出、アクティブな脅威などを関連付けて分析し、優先度の高いリスクを特定できます
アイデンティティとアクセス分析ユーザーやサービスプリンシパルの権限状況を可視化し、過剰権限アカウントや未使用権限を特定できます。IAMやJITアクセス運用の強化にもつながります
コンプライアンス管理の自動化CIS Azure Foundations Benchmark、PCI DSS、HIPAAなどの基準に対する継続評価を実施し、監査対応を効率化します
ネットワーク経路分析Wiz Security Graphによってリソース間通信を可視化し、過剰に許可されたNSGルールや不要な外部公開を把握できます
remediationガイダンス各検出結果に対して具体的な修正手順を提示し、セキュリティ対策の迅速な実装を支援します

Wizは読み取り専用APIでAzureと統合するため、既存環境への影響を抑えながら包括的なセキュリティ可視化を実現できます。多くの組織では、接続から数時間以内に初期リスクの把握と改善を開始しています。

Azure環境のリスクを把握したい場合は、無料のAzure Security Assessmentも活用できます。設定ミスや過剰権限を洗い出し、優先的に対応すべきリスクの特定に役立ちます。

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Azureセキュリティベストプラクティスに関するFAQ

Azureセキュリティに関する、よくある質問をまとめました。