クラウドコスト最適化:2026年に支出を削減

この記事のポイント
  • 適切に実施すれば、コスト効率の改善につながります。調査では最大で15%〜25%の削減が可能であることが示されています。

  • FinOpsは財務、エンジニアリング、運用チームを横断的に連携させ、クラウドコスト最適化を実行するための協働フレームワークを提供します。

  • セキュリティとコスト最適化は両立しうる領域です。未使用・放置されたリソースを排除することで、コストと攻撃対象領域を同時に最小化できます。

クラウドコスト最適化とは

クラウドコストの最適化とは、可視性の向上、リソースの適正化(ライトサイジング)、ワークロードの自動化、そしてチームの責任明確化を通じて、支出を削減しながらクラウドの効率を高める体系的な取り組みです。

単なるコストカットではなく、性能要件と支出管理のバランスを取り、クラウド投資から得られる事業価値を最大化することを目的としています。

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クラウドコスト最適化の仕組み

クラウドコスト最適化は、次の4つの原則に基づきます。

  • ムダの排除:調査によると、クラウド支出の28%50%が実質的に無駄になっている可能性があります。アイドル状態のリソースや非効率なソフトウェアロジックを特定・解消し、企業規模を問わず発生するこの大きな損失を削減します。

  • リソースの適正化(ライトサイジング):過剰にプロビジョニングされたリソースは支出の浪費につながり、利益を大きく圧迫します。長期的な需要データに基づいてリソースを適正化することで、不要な支出を削減し、利益率を改善します。

  • 価格モデルの最適化:予約済みインスタンス(RI)やスポットインスタンスなどの割引オプションを見落とすと、月間50,000ドル以上の損失につながる場合があります。ワークロードごとに最適な価格モデルを検討し、適切に切り替えます。

  • 可視性と責任の明確化:複雑なクラウド請求内容を「誰が・なぜ・何に使ったか」という具体的なアクションにつなげ、チームのコスト意識を高めます。これにより説明責任を確保し、クラウドスプロールや予期せぬ請求額の急増(ビルショック)を防ぐことができます。

クラウドコストが無駄になる主な原因

1. コンピュート・ストレージの過剰なプロビジョニング

過剰プロビジョニングは、性能問題を恐れるあまり、ワークロードに必要な量以上のリソースを意図的に購入することで発生します。その結果、未使用キャパシティに対して支払い続けることになります。代表例として、オーバースペックなEC2インスタンス、アイドル状態のKubernetesノード、過剰なIOPSなどが挙げられます。

<対策>利用メトリクスを収集・追跡し、適正化(ライトサイジング)を行い、パフォーマンス要件に合わせてノードをオートスケーリングします。

2. ゾンビリソース:未使用のまま稼働し続けているリソース

未アタッチのボリューム、古いスナップショット、アイドル状態のロードバランサーなどは、放置されると予算を浪費するだけでなく、、攻撃対象領域を広げる要因にもなります。

<対策>未使用リソースを特定し、停止・削除、または再割り当てを行います。具体的には、孤立したボリュームやスナップショット、未関連付けのIPアドレス、未使用のマシンイメージ、インスタンスが紐づいていないロードバランサーを確認してください。

さらに、リソースのライフサイクル管理やクリーンアップを自動化することも、コスト削減に有効です。

3. オートスケーリングや自動停止の欠如

静的なインフラ運用は、支出の無駄に直結します。動的なワークロードには動的なスケーリングが不可欠です。

<対策>トラフィック低下時にリソースを放置せず、変動するワークロードにはスケーリングを導入します。また、利用時間が予測できるものは、自動停止を組み込みます。

4. コストを考慮しないインフラアーキテクチャ選定

コストを意識せずにインフラを設計すると、クラウド支出は急増します。以下の設計判断がコストを押し上げている可能性があります。

  • 不適切なストレージ階層:アクセス頻度が低い、またはアーカイブ用途のデータに対して、高性能・汎用ストレージ(例:AWS S3 StandardやGP2ボリューム)を使い続けると不要なコストが発生します。

<対策> ライフサイクルポリシーを設定し、コールドデータをS3 Glacierやアーカイブ向けBlobストレージなど安価な階層へ自動移行する構成にレビューします。

  • 過剰スペックのコンピュートインスタンス:CPU最適化やメモリ最適化など、本来不要な特性のインスタンスにワークロードを配置すると、大きな過払いになります。

<対策>適正化(ライトサイジング)ツールを用いて、実際の要件に合ったインスタンスタイプとサイズに再選定します。

  • 非効率なネットワーク構成:単一の共有ロードバランサーで足りるのに複数を稼働させる、不要なパブリックIPやNAT Gatewayを利用するといった構成は、継続的な無駄を生みます。

<対策>ネットワークアーキテクチャを監査し、可能な範囲で統合、または再設計します。

  • リージョン間データ転送:リージョン間転送は、性能、データガバナンス、コンプライアンスの問題を引き起こすだけでなく、高額なデータ転送料(エグレス料金)を招き、想定外の請求になりがちです。

<対策>トラフィックルーティングの最適化やエッジキャッシュ・CDNの活用により、リージョン間通信を最小化します。

5. 限定的でサイロ化したコスト可視性

チームがクラウド予算の使途をリアルタイムに把握・調整できない環境では、非効率な支出やビルショックが常態化します。多くのケースで、データの「サイロ化」が最適化の障壁になります。

  • マルチクラウドのサイロ化:多くのクラウドサービスプロバイダー(CSP)は、独自の管理ツールを提供しますが、マルチクラウド環境全体のコストを包括的に把握できるビューは提供しません。また、効果的な意思決定に必要なビジネスコンテキストも不足しがちです。統一されたビューがないと、チームは手作業でデータをつなぎ合わせる必要があり、迅速な意思決定が困難になります。

<対策>マルチクラウド環境全体を統合し、可視性を提供する最適化ツールを導入します。

  • 機能別のサイロ化:エンジニアは、クラウド支出に直結する意思決定に最も近い立場ですが、既存のコストツールは財務向けに設計されていることが多くエンジニアが活用できる示唆が不足しがちです。この断絶により、エンジニアがコスト議論から外され、ワークロード最適化の機会損失や非効率への対応遅延、チーム間の摩擦を招きます。

<対策>明確なオーナーシップ、実行可能な示唆、クラウド環境全体とリソース間関係の完全なコンテキストを提供し、エンジニアリングのワークフローを支援するクラウドコスト最適化ツールへ投資します。

6. シャドーIT

シャドーITとは、組織の承認やガバナンスが及ばない場所で、ポリシーを逸脱しては立ち上げられたリソースを指します。シャドーITはクラウドスプロールや制御不能な支出、未軽減のセキュリティリスクを引き起こします。

<対策>調達を中央集権化するポリシーを整備するとともに、クラウドネイティブなセキュリティソリューションを用いて、シャドーアセットを検知・解消します。

クラウドコスト最適化の主要戦略

クラウドコストの最適化を進めるための重要な第一歩は、クラウド運用モデルを整備することです。クラウド運用モデルとは、組織がチーム、ツール、プロセスを横断してクラウド環境を管理・ガバナンス・最適化するための「仕組み」を定義したものです。これが、持続可能かつスケーラブルなコスト最適化を実現するための土台になります。

モデルを整備した後は、以下の6つのベストプラクティスを実装していきます。

1. タギングとリソースのオーナーシップ

Policy as Code(PaC)、Infrastructure as Code(IaC)ツールを用いて、チーム・プロジェクト・環境単位で一貫したタギングを強制します。これによりリソースのオーナーシップを可視化し、開発チームが自らのコストに責任を持つ(オーナーシップ)文化を促進します。

  • タグポリシーの定義と、統一されたタグスキーマの作成

  • クラウドネイティブのPaCツール(例:AWS tag policies)によるタグ付与の自動化

  • TerraformなどのIaCツールによるタグ付与の必須化と、マルチクラウド間の一貫性確保

  • タグに基づくコストレポートを生成し、コスト按分と予測精度を向上

2. コンピュートリソースの適正化(ライトサイジング)

  • 利用率を定期的に分析し、AWS Compute OptimizerやGCP Recommender APIなどのツールを用いてインスタンスやワークロードを適切にリサイズします。

  • 適正化(ライトサイジング)後のリソースが最適な性能を維持できるか検証しトラフィック急増時の性能不足を回避します

3. オートスケーリングとスケジュール停止

リアルタイムのトラフィックに合わせてリソースの稼働量を動的に調整し、パフォーマンスを維持したまま不要な支出を削減します。

  • トラフィックの増減に応じて、コンピュートリソースをスケールアップ・ダウン、およびスケールイン・アウさせ、常に最適な稼働状態を保ちます。

  • スケジュール停止や「ゼロまでのスケール(scaling to zero)」により、必要なときだけ稼働するようにできます

  • メトリクス・ポリシーに基づくオートスケーラー(例:AWS Auto Scaling groups)、クラウドネイティブのスケジューラ(例:AWS Instance Scheduler)、または非クリティカルなワークロード向けにサーバーレスのイベントバス(例:Amazon EventBridge)を活用します

4. 割引モデル(Spot Instances/Reserved Instances/Savings Plans)の活用

ワークロードの特性に合わせて最適な価格モデルを選択します。

  • Spot Instances:非クリティカル・ステートレス・フォールトトレラントなワークロードに

  • Reserved Instances:予測可能でステートフルなワークロードに

  • Savings Plans:柔軟性が必要だが使用量が安定しているワークロードに

5. ストレージのライフサイクルポリシー

  • アクセス頻度と必要な速度要件に基づいて階層化ストレージを設計します

  • アクセスパターンを自動監視し、参照頻度の低いデータをコールドストレージへ移動するポリシーを適用します

6. コストダッシュボードと予算アラート

  • チーム、オーナーシップ、または環境タグ単位でクラウド支出をリアルタイムに可視化します

  • 予算しきい値(例:月次予算の70%)に到達したら自動でアラートを発火させることで、チームが素早く支出習慣を調整し、コスト超過を未然に防止できるようにします。

クラウドコスト最適化におけるFinOpsの役割

FinOpsは、財務、エンジニアリング、事業チームを結束させ、協働とデータドリブンな意思決定を通じてクラウド支出を最適化します。不要なクラウド支出を削減しつつ事業価値を最大化するために、財務・運用・エンジニアリングを同期させる「接着剤」として機能します。

FinOpsは、以下の3つのフェーズを循環させて進めます。

FinOpsの3つのフェーズ

フェーズ1 — Inform マルチクラウドを含むクラウド環境全体のクラウド支出を、リアルタイムかつ統合された可視性で把握します。共有ダッシュボードを「単一の信頼できる情報源(source of truth)」とすることで、責任共有、正確な予測、そして適切なコスト配賦が可能になります。

フェーズ2 — Optimize 前述のコスト最適化戦略を実装し、ムダの削減、予算超過の防止、効率改善を具体的に進めます。

フェーズ3 — Operate FinOpsのKPIを定義・追跡し、コスト最適化の成果を継続的に測定・改善します。主なKPIと導入のメリットは以下です。

  • Cost per ワークロード アプリケーションやサービスの支出を、トランザクションやAPIコールなどの単位に分解して追跡します

<メリット>コストを最も消費しているワークロードを特定し、追加の最適化や適正化(ライトサイジング)につなげます

  • Forecast accuracy 予算予測と実支出の乖離を確認します

<メリット>予算の現実性を担保し、過剰支出・過小支出を未然に防ぎます

  • Unallocated spend 帰属不明なコストを特定します。<メリット>原因となるシャドーITやタグ未設定リソースを炙り出し、説明責任とセキュリティを強化します

  • Optimization coverage オートスケーリングやゼロスケールなどが有効化されたリソースの割合を測定します

<メリット>チームがコスト最適化戦略をどの程度活用できているかを可視化します

AWS、Azure、GCPにおけるクラウドコスト最適化

各クラウドプロバイダー(CSP)は、幅広い価格オファリングやネイティブツールを通じてクラウドコスト最適化を支援しています。ただし、マルチクラウド環境でFinOpsを機能させるには、これらを統合し「単一の信頼できる情報源(Source of Truth)」として可視化する仕組みが不可欠です。

AWS

  • AWS Cost Explorer 過去のクラウド支出と予測をビジュアル化し、コスト急増の分析、カスタムタグによるリソースガバナンスを支援します。

  • AWS Trusted Advisor アイドルリソースや古いスナップショットなどの非効率を検出し、推奨されるアクションを提示・自動修復します。

  • AWS Compute Optimizer CloudWatchメトリクスを通じて利用パターンと性能を追跡し、過剰・不足プロビジョニングされたリソースの適正化(ライトサイジング)選択肢を推奨します

  • AWS Savings Plans 一定のリソース使用(予測可能なワークロード向け)をコミットする代わりに割引を得られる選択肢を提供します

Azure

  • Microsoft Cost Management 支出の追跡と予測、チーム・タグベースのリソース配賦のビジュアルを提供し、高度な分析ツールとも連携します

  • Azure Advisor recommendations 適正化(ライトサイジング)の提案、アイドルリソースの停止などを通じてクラウドスプロールを抑止します

  • Azure Reserved VM Instances 1年または3年の長期契約により、ベースラインワークロードのコストを大幅に削減します

GCP

  • Cloud Billing Reports リソース、チーム、ラベル、プロジェクト単位でクラウドコストを深掘りできます。フィルタ付きのカスタムダッシュボードも作成可能です

  • Recommender API 適正化(ライトサイジング)の推奨、しきい値アラートやアクションのトリガーなどを提供します

  • Committed use discounts 1年または3年の期間、リソース利用や支出をコミットすることで大きな割引が得られます。

セキュリティとコスト最適化が相乗効果を生む理由

セキュリティを改善するとクラウドのムダを削減でき、適切なクラウドコスト最適化は攻撃対象領域を縮小させます。この両立において、Cloud Native Application Protection Platform(CNAPP)のようなセキュリティソリューションが重要な役割をはたします。CNAPPは次のように機能します。

  • アセットをインベントリ化し、マルチクラウド環境全体の統合された可視性を提供します。未使用で過剰な権限を持つワークロードやゾンビアセットといったコストとリスクの両面で問題となるリソースを特定します。

  • パブリックに公開されたストレージバケットなど、高額なセキュリティインシデントにつながり得る設定ミスを防止します

  • シャドーITを特定し、クラウドスプロール、追跡不能な支出、未監視のセキュリティリスクを防ぎます

  • 自動化とPolicy as Codeを活用し、タギング、プロビジョニング制限、最小権限アクセスを強制します

  • 未使用・孤立したリソースを安全に廃止し、支出とリスクを削減します

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Wizによるクラウドコスト最適化の強化

Wizはクラウドセキュリティを強化するだけでなく、セキュリティのインサイトとコストの可視性を組み合わせ、インテリジェントな支出の最適化を支援します。これにより、事業成果を最大化させることが可能です。

Wiz Cloud Cost Optimizationの主な機能

  1. リソース粒度の詳細なコストレポート:クラウド環境内の全リソースについて、包括的なインベントリを作成します。リソースごとの支出の監視、リソース間の関係性の把握もできます。さらに、コストをプロジェクトやサービス単位でグルーピングし、チームやプロダクトへの容易な配賦を実現します。

  2. レガシーリソースの検出:Amazon EKSクラスターのような延長サポート版で稼働しているリソースを特定。アップグレードや廃止の判断を促し、大幅なコスト削減へつなげます。

  3. 未使用・孤立リソースの特定:未使用ボリュームやロードバランサーなど、不要なコストを生むアイドル・未アタッチリソースを検出します。

  4. 利用メトリクスに基づく適正化(ライトサイジング):リソース割り当てと実際の利用状況の差分を分析し、最適なサイズへの変更機会を特定します。

  5. セキュリティ起点のコストインサイト:セキュリティポスチャとコスト・利用データを相関させ、セキュリティを向上させつつコスト削減できる施策の優先順位を決定。これにより、削除できるリソースを修正し続けるといった無駄を防げます。

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