オープンソースのコンテナセキュリティツール【ユースケース別】

コンテナセキュリティとは?その重要性と背景

コンテナセキュリティとは、さまざまなセキュリティツールと実践手法を用いて、コンテナ化されたアプリケーションを潜在的な脆弱性から保護する取り組みのことです。クラウドネイティブアプリケーションが拡大する一方で、コンテナをターゲットにしたサイバー攻撃など関連する脆弱性の件数が急増しています。コンテナはアプリケーションの基盤を成す要素であるため、そのセキュリティ対策は最優先事項となっています。

こうした背景から、多くの企業が最新のツールとベストプラクティスを組み合わせたセキュリティ態勢(ポスチャ)の強化に取り組んでいます。

図1:コンテナの脆弱性の傾向(データ出典:cve.mitre.org)
Container Security Cheat Sheet

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コンテナの脅威モデルとは

脅威モデルとは、想定される脅威を特定し、それらを緩和するためのアクションを整理したものです。コンテナにおいては、環境やホストしているソフトウェアによってリスクが異なるため、すべてのケースを網羅できる単一のモデルは存在しません。しかし、よく見られる脆弱性を特定することで、自社に最適な脅威モデルを作成できます。

図2:コンテナ脅威モデル

上の図は、コンテナ化アプリケーションにおける一般的な攻撃ベクトル(攻撃経路)を示しています。具体的には、脆弱なコード、侵害されたコンテナイメージ、ランタイムやオーケストレーターの設定ミス、シークレット(認証情報)の露出、安全でないネットワーク、コンテナエスケープなどです。

こうした多岐にわたる攻撃を防ぐには、コンテナプラットフォームの導入時にセキュリティのベストプラクティスに沿った適切な設定が必要です。つまり、コンテナ環境を構築するたびに、最初のステップとして必要なセキュリティ対策を有効化することが求められます。

コンテナセキュリティを支えるオープンソースツールの選択肢

コンテナプラットフォームに備わるデフォルトのセキュリティ対策でも、基礎的な保護は提供されます。これに加えて、多くの企業では、コンプライアンスの遵守や ランタイム(runtime)の可視性といった専門的な要件に対応するべく、追加ツールを導入するようになりました。それに伴い、より広いカバレッジとカスタマイズ性を確保するために外部ツールと統合するケースが一般的です。

オープンソースツールは、数あるセキュリティツールの中でも、透明性コスト効率カスタマイズ性といった利点から広く採用されています。これらは前述のコンテナ脅威モデルを基に、以下の図のように8つのグループに分類できます。

図3:オープンソースのコンテナセキュリティツール

以降のセクションでは、各グループで特に利用者の多いツールを、主な専門領域ごとに紹介します。ただし、以下のツールは複数用途で使えることも多く、コンテナセキュリティの複数カテゴリにまたがる機能を提供する場合があります。

注: 本記事ではアクティブなオープンソースプロジェクトのみを扱います。人気があっても、メンテナンスが停止している、またはアクティブに開発されていないツール(例:Anchore Enginekube-hunter)は対象外です。

1. イメージスキャン/脆弱性評価ツール

イメージスキャンと脆弱性評価ツールは、コンテナイメージを検査し、既知の脆弱性を特定することに特化しています。

Clair

Clairは、Ubuntu CVE trackerCommon Vulnerabilities and Exposures(CVE)databaseなどのデータベースに掲載されている既知の脆弱性を基に、コンテナイメージをスキャンし脆弱性を評価します。通常、コンテナイメージスキャンでは、レジストリ(例:Docker Hub)内のイメージを直接スキャンするアプローチが一般的ですが、これには制約もあります。例えば、現時点の Docker Hub では、プライベートリポジトリでしかスキャン機能を利用できません。

Clair が優れているのは、ローカルのイメージスキャンと、レジストリに格納されたイメージに対する「ポイント&シュート方式(ワンクリック)」のスキャンの両方に対応している点です。ローカルスキャンは主に CI/CD パイプライン で役立ち、イメージをレジストリに プッシュ するか、ビルドを失敗させるかを判断できます。一方、ポイント&シュート方式では、プル する前にレジストリ上のイメージを直接スキャンします。この方式には Clair と Docker Hub の統合が必要ですが、Klarを使えば比較的容易に実施できます。

Trivy

Trivyの最大の特徴は、幅広いコンテナセキュリティスキャン機能を備えている点です。コンテナイメージ、ファイルシステム、Git リポジトリ、仮想マシン、クラウドサービスまでカバーし、設定監査とコンプライアンススキャンも提供します。

本ツールは多機能で使いやすく、複雑な設定を必要としないことから、開発者に広く普及しました。また、クラウドネイティブセキュリティツールに注力する Aqua Security社 によって開発・維持されており、同社は GitHub 上で200以上ものオープンソースリポジトリを公開しています。

Grype と Syft

GrypeSyftは、Anchore社 によって異なる目的で開発されました。

Grype は主にコンテナイメージとファイルシステムのスキャンを担います。また、コンテナを構成するすべてのメタデータやコンポーネント、パッケージ情報を集約した「ソフトウェア部品表(SBOM)」のスキャンにも対応しています。

一方Syft は、直接スキャンよりも SBOM の生成にフォーカスしたツールです。SBOM を生成することで、ソフトウェアに含まれるコンポーネントとその依存関係を正確に把握することが可能になり、脆弱性が発見された際の影響範囲の特定や管理が容易になります。

2. 設定とコンプライアンス

設定・コンプライアンス管理ツールは、コンテナおよび Kubernetes 等のコンテナオーケストレーションシステムが適切に構成されているかを検証し、セキュリティのベストプラクティスや規制要件への準拠を目的としたツールです。

Kube-bench

Kube-benchは Aqua Security の別のオープンソースツールで、よく知られたCIS Kubernetes Benchmarkに基づいて Kubernetes クラスターのセキュリティをチェックします。自動チェックが完了すると、下図のようにpass または fail で結果が表示されます。

Hadolint

Hadolint は Dockerfile のリンターです。Docker コミュニティのルールや、経験豊富な Docker ユーザーのベストプラクティスに基づくルールを適用することで、チームが標準に沿った記述をおこなえるよう支援します。

3. ポリシー管理と適用

ポリシー管理・適用のツールは、コンテナ環境全体におけるセキュリティポリシーの策定から運用までを一貫して自動化します。ガバナンスの自動化を支援し、セキュリティルールが一貫して適用されるようにします。

Kyverno

Kyvernoは、Kubernetes 専用に設計されたポリシーエンジンです。YAMLでポリシーを記述できるのが特徴で、デプロイされるコンテナや Kubernetes リソースが組織のセキュリティやコンプライアンス標準を満たしているかを自動で検証・保証します。

Open Policy Agent(OPA)

OPAは汎用性の高いポリシーエンジンで、高水準の宣言型言語である「Rego」を使用します。多様なシステムの複雑なポリシー定義にも柔軟に対応できます。

4. シークレット管理

シークレット管理ツールは、機密情報(例:パスワード、トークン、SSH 鍵、証明書)が適切なアクセス制御のもとで安全に保管されるように設計されています。

Hashicorp Vault

Hashicorp Vaultは世界最大級の組織で広く採用されている最も信頼性の高いオープンソースツールの一つです。GitHub のスター数は約3万に達し、ダウンロード数は5億回を超えるなど、圧倒的な実績を誇ります。

機密クレデンシャルを安全に保管・管理するための集中プラットフォームを提供し、アクセスや操作に関する詳細な監査ログを記録できるため、コンプライアンスの観点でも有用です。なお、商用利用向けのエンタープライズ版では、容易なデプロイやディザスタリカバリ、namespace サポートなどの、追加のセキュリティ機能と拡張性が提供されます。

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5. ネットワークセキュリティ

ネットワークセキュリティツールは、コンテナとサービス間の通信経路を保護するツールです。ネットワーキングポリシーの適用やネットワークセグメンテーション、トラフィック制御などを通じ、不正アクセスの防止と転送中データの保護を実現します。

Project Calico

オープンソース版のCalicoは、Kubernetes を中心としたコンテナ環境向けに、コアとなるネットワーク機能とネットワークセキュリティ機能を提供します。主な機能は、ネットワークポリシーの適用、IP アドレス管理(IPAM)、egress 制御、namespace の分離などです。他のツールと同様にエンタープライズ版も提供されています。

Cilium

Ciliumは、Linux カーネル技術である Berkeley Packet Filter(eBPF)上に構築されたコンテナ環境向けの包括的なネットワーキングソリューションです。高度なセキュリティ、可観測性、ネットワーキング機能に加え、直近ではサービスメッシュ機能も提供しています。本ツールは完全にオープンソースですが、大規模なプロジェクト向けには商用サポートがついたCilium Enterprise が選択可能です。

図5:繊毛の特徴(出典:Cilium)

6. ランタイム(runtime)セキュリティと侵入検知

ランタイムセキュリティと侵入検知ツールは、コンテナ化アプリケーションの実行状態をリアルタイムで監視・保護します。

Falco

Falcoはクラウドエコシステム内の脅威を監視し、検出するツールです。主に侵入検知、コンプライアンスの保証、コンテナ化アプリケーションの挙動監視に利用されます。

7. セキュリティオーケストレーション

セキュリティオーケストレーションツールは、複数のセキュリティツールやプロセスの統合を自動化します。セキュリティタスクの実行を調整・効率化することで、インシデント対応の迅速化や、高度なセキュリティ分析・レポーティングを可能にします。

Harbor

Harborは、VMware によって開発され、現在は Cloud Native Computing Foundation(CNCF)のプロジェクトとなっているオープンソースのコンテナイメージレジストリです。標準的なコンテナレジストリの機能に加え、ロールベースのアクセス制御(RBAC)、脆弱性スキャン、イメージ署名などの高度な機能を備えています。セキュリティとコンプライアンスの両面から、コンテナイメージの管理を大幅に強化します。

8. その他のセキュリティツール

これまでのカテゴリに属さなかったKubesecNotaryGreenbone OpenVASGrafeasWazuhは、それぞれ独自の機能を提供していたり、より広いコンテナセキュリティ領域の中で特定のニッチに対応していたりします。

Wiz で採用しているコンテナセキュリティの考え方

オープンソース(OSS)のコンテナセキュリティツールは、イメージスキャン、ポリシー適用、ランタイム検知など、狙いを絞った課題の解決に優れています。開発者とセキュリティチームに対して、ソフトウェア開発ライフサイクル全体に関わる防御強化を提供してくれるこれらのツールは、多くのクラウドネイティブ環境の基盤となっています。

Wiz は、OSSツールの透明性・柔軟性と、統合セキュリティプラットフォームの可視性・自動化を組み合わせることで、最も効果的な保護を実現できると考えています。OSS ツールは深さとコミュニティ主導のイノベーションを提供し、Wiz のようなプラットフォームはそれらの 情報をコードやビルド パイプラインから、ランタイム環境までend-to-endで接続します。

具体的には、OSSのスキャナーやポリシーエンジン、レジストリと連携しつつ、コンテナ設定やランタイムアクティビティを継続的に分析・脅威の早期検知と、スケールしたコンプライアンス維持を支援。検出結果を一元化してクラウドワークロード上の「実際のリスク」へマッピングします。このコンテキストにより、チームは脆弱性や設定ミス、その影響を明確に理解し、露出と悪用可能性に基づいて修復の優先度を決められます。

このように、OSSと Wiz を組み合わせることで相乗効果が得られます。Wiz の、ビルドからランタイムまで継続的な可視性を提供する仕組みを確認したい場合は、ぜひデモをご活用ください。

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