CNAPPとは
クラウドネイティブ・アプリケーション保護プラットフォーム(CNAPP)は、アプリケーションのライフサイクル全体を保護する統合ソリューションです。脆弱性管理、設定スキャン、アイデンティティ分析、ランタイム保護などのコア機能を組み合わせることで、サイロ化を排除し可視性を向上させます。
オープンソースソフトウェア(OSS)のセキュリティツールは個々のセキュリティ領域をカバーしますが、アプリケーションのライフサイクル全体にわたる完全なエンドツーエンドの保護は提供しません。Gartner社はこのギャップを認識しており、2029年までにクラウド環境内でゼロトラストの実装に成功した企業の40%が、CNAPPソリューションが提供する高度な可視性と制御機能に依存するようになると予測しています。
CNAPPソリューションのカテゴリ
セキュリティチームは、CNAPPの必須機能として以下を確認する必要があります:
CSPM(Cloud Security Posture Management):クラウドセキュリティ体制管理
CWPP(Cloud Workload Protection Platform):クラウドワークロード保護プラットフォーム(仮想マシンおよびコンテナセキュリティを含む)
CIEM(Cloud Infrastructure Entitlement Management):クラウドインフラ権限管理
AST(Application Security Testing):アプリケーションセキュリティテスト
CDR(Cloud Detection and Response):クラウド検知・対応
組織は、CNAPPの個々の領域に対応する幅広いオープンソースセキュリティツールを利用できます。しかし、単一の包括的なソリューションが提供する機能の全範囲を備えたツールはほとんどありません。これが、商用CNAPPがシームレスな相互運用性、集中管理、マルチクラウド環境のサポートにおいて選ばれる理由です。
2025 Gartner® Market Guide for CNAPP
The 2025 Gartner® Market Guide for Cloud-Native Application Protection Platforms (CNAPP) explores this shift and outlines what security leaders should consider as the market matures.

クラウドセキュリティ体制管理(CSPM)
CSPMツールはクラウド環境を継続的にモニタリングし、設定ミス、コンプライアンスのギャップ、脆弱性を特定します。これらのソリューションは、クラウドのセキュリティ態勢を明確に可視化し、具体的な改善策(インサイト)を提供することで、チームがセキュリティのベストプラクティスを適用し、各種規制フレームワークに準拠できるよう支援します。
1. OpenSCAP
SCAP標準を使用して、システムのコンプライアンス検証と脆弱性評価の自動化を支援するオープンソースツールです。
主な機能
セキュリティベースラインに沿ってシステムをスキャンし、設定がNISTなどのフレームワークに準拠しているか検証します
スケジュールスキャンの実行と監査対応レポートの生成により、コンプライアンスチェックを自動化します
制限事項
クラウドサービスのネイティブサポートがなく、主にOS(オペレーティングシステム)に焦点を当てています
マルチクラウドやコンテナ環境に対応させるには手動での設定が必要です
主な利用者:ハイブリッドクラウドやオンプレミス環境でホストのコンプライアンスを適用・維持するチーム
2. Scout Suite
クラウドプロバイダーのAPIを利用してパブリッククラウド環境をスキャンし、設定ミスやセキュリティリスクを検出するオープンソースの監査ツールです。
主な機能
AWS、Azure、GCP、Alibaba Cloudを横断するセキュリティスキャンを実行し、過剰な権限や設定ミスの潜むリソースを検出します
検出結果を重大度別に分類し、修復作業をガイドするインタラクティブなレポートを生成します
制限事項
継続的な監視ではなく、特定時点(ポイントインタイム)の静的分析のみを実行します
自動修復やリアルタイムアラートのネイティブ機能はありません
主な利用者:マルチクラウド環境で、手動での定期監査を実施するセキュリティチーム
3. Steampipe
標準SQLを使用して、クラウドAPI、サービス、設定データをクエリできるオープンソースプラットフォームです。主要なクラウドプロバイダー向けに多数のプラグインを提供しています。
主な機能
APIやクラウドのメタデータに対するライブSQLクエリを可能にし、ETLを介さずにインフラの分析を実行できます
拡張性の高いプラグインライブラリと構成モデルにより、チェック機能のカスタマイズやダッシュボードの構築をサポートします
構成データとサービスデータをテーブル形式で公開し、チームがリスク評価のためのカスタムクエリを作成できるようにします
制限事項
主にクエリと分析に特化しており、継続的なモニタリングや自動修復の組み込み機能はありません
クラウド全体のセキュリティ態勢をカバーする有用なクエリを作成するには、相応の時間とSQLスキルが必要です
主な利用者:クラウドインフラに対して柔軟なカスタムクエリを求め、SQLベースでリスク調査ができるセキュリティチーム
クラウドワークロード保護プラットフォーム(CWPP)
CWPPソリューションは、開発、テスト、ランタイムの各フェーズにわたって、クラウドベースのアプリケーションとワークロードを脅威から保護します。これらのツールは開発プロセスの早い段階でのセキュリティ対策(シフトレフトモデル)をサポートし、DevOpsおよびSecOps(セキュア運用)チームがSDLC(ソフトウェア開発ライフサイクル)とランタイムのワークフローにセキュリティを組み込むことを可能にします。
汎用CWPPツール
1. Tripwire
ホストベースのFIM(ファイル整合性監視)および変更検出ツールです。
主な機能
ファイルおよびディレクトリレベルの整合性を監視し、現在の状態をベースラインと比較して不正な変更を検出します
変更の責任者、発生した内容、発生した日時を報告し、監査対応を支援します
既知の正常な状態からの逸脱に対してアラートを発信し、早期検出を促進します
制限事項
主にファイルシステムとホストの変更を対象としており、コンテナやクラウドネイティブワークロードの認識機能は組み込まれていません
手動でのベースライン設定が必要なため、動的なクラウド環境やCI環境へのスケーリングが難しい場合があります
主な利用者:ファイル整合性監視(FIM)が重要な統制項目であるレガシーサーバーやハイブリッドクラウドインフラを保護するチーム
2. Wazuh
ホストベースの侵入検知、脅威検知、ログ分析、エンドポイント/ワークロード保護をサポートするオープンソースのセキュリティプラットフォームです。
主な機能
ホスト、コンテナ、クラウドワークロードからログ、イベント、テレメトリを集約して脅威を検出します
ファイル整合性監視、侵入検知、脆弱性検出を環境横断で一元化します
エージェントやコンテナによる柔軟なデプロイに対応し、混在するクラウドネイティブ環境をサポートします
制限事項
ルール、エージェント、システムの統合において、運用のオーバーヘッドが必要になる場合があります
コンテナイメージのスキャンや、サプライチェーンセキュリティの脆弱性調査には特化していません
主な利用者:従来型サーバー、コンテナ、クラウド環境にわたる統合的なホスト・ワークロード監視を必要とするセキュリティチーム
Kubernetesおよびコンテナ固有のCWPPツール
1. Clair
コンテナイメージの既知の脆弱性をスキャンする、オープンソースの静的分析エンジンです。
主な機能
コンテナイメージをレイヤーごとにインデックス化し、デプロイ前に脆弱なOSパッケージや依存関係を特定します
脆弱性メタデータを継続的に更新し、マッチングを行います
レジストリやCI/CDパイプラインへ統合するためのAPIを提供します
制限事項
静的なイメージ分析に特化しており、ランタイム時の動作監視は行いません
別途、サポートインフラのデプロイが必要になる場合があります
主な利用者:CI/CDパイプラインの一環として、コンテナイメージのスキャンを自動化したいDevSecOpsチーム
2. Trivy
コンテナイメージ、ファイルシステム、IaC(infrastructure as code)アーティファクト、Gitリポジトリに対応したオープンソースの脆弱性スキャナーです。
主な機能
コンテナイメージ、ファイルシステム、Gitリポジトリをスキャンし、OSパッケージやアプリケーションの依存関係、設定ミス、シークレットを検出します
最小限のセットアップでCI/CDパイプラインへ容易に統合できます
広範なカバレッジで高速なスキャンを両立しています
制限事項
スキャン機能に特化しているため、包括的なランタイム保護は不足する場合があります
優先順位付けが必要な大量の検出結果が生成される場合があります
主な利用者:ビルドプロセスの早い段階で、軽量かつ広範なスキャンを求める開発・運営チーム
3. ThreatMapper
マルチクラウド環境にわたるアタックパスをマッピングする、オープンソースのクラウドネイティブ・セキュリティオブザーバビリティプラットフォームです。
主な機能
コンテナランタイム、サーバーレス関数、クラウドワークロード全体でアセットを検出し、アタックパスを計算します
稼働中のインフラとイメージの脆弱性スキャンを実行し、悪用可能性に基づいて脅威の優先順位付けを行います
マルチクラウドおよびコンテナオーケストレーション環境をサポートします
制限事項
シンプルなイメージスキャナーに比べ、本番環境へのデプロイや初期構築が複雑です
リスクの発見と可視化に特化しており、自動修復機能のすべてをネイティブにカバーしているわけではありません
主な利用者:コンテナおよびサーバーレス環境に対応した、高度な脅威マッピングを求めるクラウドセキュリティチーム
The IDC MarketScape for CNAPP
The report analyzes the capabilities and strategies of major CNAPP vendors worldwide, positioning them based on current product execution and long-term strategic alignment.

クラウドインフラ権限管理(CIEM)
CIEMソリューションは、権限、アイデンティティ、エンタイトルメントのリスクを管理することで、クラウドリソースへのアクセスを適切に統制・制御します。
1. Open Policy Agent(OPA)
アクセス権および設定ポリシーの定義・適用を行うための、オープンソースの汎用ポリシーエンジンです。
主な機能
専用のRego(レゴ)言語を使用し、ポリシーをコードとして記述(Policy as Code)できます
多様なシステム(Kubernetes、CI/CD、API)を横断する、統一的なポリシー適用をサポートします
ポリシーに基づく認可判定(意思決定)を、アプリケ=ションのサービスロジックから分離します
制限事項
Rego言語によるポリシーの設計や保守において、エンジニアリング側の労力が発生します
ユーザー管理やアイデンティティ連携(フェデレーション)の組み込み機能は備えていません
主な利用者:マルチクラウド環境全体で、きめ細かなアクセスコントロールを共通コード化したいセキュリティチーム
2. Keycloak
シングルサインオン(SSO)、ユーザー連携(フェデレーション)、きめ細かな認可をサポートする、オープンソースのIAM(アイデンティティ・アクセス管理)プラットフォームです。
主な機能
SSO、ソーシャルログイン、OAuth 2.0、OpenID Connect、SAMLに対応した集中型のIAM環境を提供します
認可サービスを通じて、きめ細かな権限設定やロールベースのアクセス制御(RBAC)を実現します
拡張性の高いなアイデンティティフローと、各種外部システムとの統合に対応しています
制限事項
ユーザーアイデンティティの管理に特化しており、クラウド上の「過剰な権限」や「不要なアクセス権の肥大化(エンタイトルメントの拡散)」の自動検知には対応していません
複数のクラウドプロバイダーを横断してスケールさせるには、高度な設定が必要になる場合があります
主な利用者:認証、フェデレーション、認可のためのオープンソースIAMを必要とする組織
アプリケーションセキュリティテスト(AST)
ASTソリューションは、コード、アプリケーション、依存関係をスキャンし、SDLC(ソフトウェア開発ライフサイクル)の早い段階でセキュリティの脆弱性を特定します。一般的な手法には、SAST静的アプリケーションセキュリティテスト)、DAST(動的アプリケーションセキュリティテスト)、SCA(ソフトウェアコンポジション分析)があります。
1. PMD
Java、Apex、その他の言語に対応した、オープンソースの静的コード分析ツールです。
主な機能
ソースコードをスキャンし、アンチパターン、バッドプラクティス、コードスメルを検出します
複数のプログラミング言語に対応しており、CI/CDとの統合や各種IDE(統合開発環境)のプラグインをサポートします
カスタマイズ可能なルールセットと自動修正機能を提供します
制限事項
詳細なセキュリティテストではなく、コード品質に焦点を当てています
フィードバックとノイズのバランスを取るためにルールセットの細かな調整が必要です
主な利用者:初期QA段階で、コード品質向上のためにJavaやApexを使用する開発チーム
2. ZAP(Zed Attack Proxy)
OWASP(Open Web Application Security Project)が管理・保守するWebアプリケーションのペネトレーションテスト(侵入テスト)向けオープンソースDASTツールです。
主な機能
実際の攻撃をシミュレートし、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)、認証の不備などを特定します
GUI、API、プラグインを介した自動スキャンとインタラクティブテストをサポートします
DevSecOps向けのCI/CDツールと統合できます
制限事項
稼働中のアプリケーションでのみ動作します
環境に合わせてチューニングを行わないと誤検知が生成する場合があります
主な利用者:Webアプリケーションのセキュリティテストを自動化・効率化したいチーム
3. Bandit
Pythonコードのセキュリティ問題を検出するための、オープンソースの静的分析ツールです。
主な機能
ASTを利用してPythonのソースファイルを検査し、安全でない記述パターンを検出します
CIワークフロー向けに、柔軟なレポート出力オプション(JSON、HTML)を提供します
検出ルールや重要度レベルのカスタマイズが可能です
制限事項
Pythonのみをサポートしています
ノイズを減らすためにチューニングが必要です
主な利用者:CI/CDにスキャンを統合するPython開発者
4. SonarQube Community Edition
静的コード分析と品質管理のための無料のオープンソース版ライセンスです。
主な機能
複数の開発言語にわたるコードベースをスキャンし、バグ、コードスメル、基本的なセキュリティの脆弱性を検出します
GitHub、Jenkins、その他の主要なCIツールと統合できます
分析結果のダッシュボード表示や、履歴トレンドデータを提供します
制限事項
Community Editionのセキュリティルールは基本的な内容に留まり、高度なルールは商用版(有料プラン)でのみ提供されます
大規模プロジェクトではチューニングが必要になる場合があります
主な利用者:幅広い言語サポートを備え、無料で拡張性の高いSASTツールを求めるチーム
クラウド検知・対応(CDR)
CDRツールは、クラウド環境におけるセキュリティインシデントの特定、調査、および対応を支援します。
1. Diffy
侵害されたLinuxインスタンスを特定するために、Netflix社のSIRT(セキュリティインシデント対応チーム)が開発した、オープンソースのデジタルフォレンジック・インシデント対応(DFIR)ツールです。
主な機能
稼働中のインスタンスを既知の正常なベースラインと比較します
通常状態から逸脱しているホストを優先順位付けし、迅速なトリアージを支援します
プラグインアーキテクチャにより、AWS上のLinux環境をサポートします
制限事項
主にLinuxインスタンスを対象としています
ベースラインの設定やプラグインのサポートにおいて、手動での作業が必要です
主な利用者:AWS上のLinuxワークロードを運用し、高度なインシデント対応を行うチーム
2. Threat.Zone
動的サンドボックスと動作分析を備えた、マルウェア分析プラットフォームです。
主な機能
ハイパーバイザーレベルでマルウェアの動的分析を実行します
サンドボックス環境内でネットワークトラフィック、不審な振る舞い、エクスプロイトの試行をキャプチャします
静的分析、動的分析、およびエミュレーション分析の一元化を可能にします
制限事項
クラウド環境全体の継続的な監視ではなく、個別のマルウェア分析に特化しています
大規模なインフラと高度な設定が必要になる場合があります
主な利用者:詳細なマルウェア分析や脅威ハンティング実施するインシデント対応チーム
CNAPPを検討すべき理由(オープンソースがもたらす価値)
CNAPPは、クラウドアプリケーションのライフサイクル全体にわたるサイバーセキュリティ管理において、一元化されたアプローチをチームに提供します。部門間のサイロ化を排除してエンドツーエンドの可視性を確保することで、運用のオーバーヘッドを削減し、真のリスクを浮き彫りにします。その結果、コストを抑えながら迅速な問題修復を可能にします。
オープンソースのCNAPPツールは、包括的なエンタープライズ向けの製品群(スタック)への投資を抑えつつ、まずはセキュリティを強化したいエンジニアにとって、優れた出発点です。これらのツールは、クラウドネイティブ環境やサードパーティ製サービスへの柔軟な接続、リスク評価の透明性、そしてセキュリティワークフローを自由にカスタマイズできる柔軟性提供します。実際、多くのチームが最初にOSSを導入して実績と明確な要件を獲得し、拡張性と自動化が最優先課題となった段階で、エンタープライズ向けCNAPPへの統合・移行を進めています。
オープンソースの課題:注意点と考慮事項
オープンソースツールはコストを抑えられ柔軟である一方、導入にあたっては以下のような重大なトレードオフを伴うケースが少なくありません。
断片化
ほとんどのツールは個別に開発されており、ネイティブに連携することはまれです。そのため、可視性のギャップやカバレッジの重複、一貫性のない分析結果が生じる原因となります。
アラート疲れ
複数の異なるツールが同一のアセットをスキャンすると、重複や矛盾するアラートが発生しやすくなります。その結果、対応の遅れを招き、手作業による確認・仕分けの負担が増大します。
サポートの欠如
オープンソースプロジェクトでは、SLAやロードマップは提供されません。アップデート、パッチ、互換性チェックはすべて導入チームの自己責任となります。
統合型CNAPPは、これら主要なセキュリティ機能を単一のプラットフォームに集約(バンドル)することで、上記の課題を根本から解決します。
最適なツールの選択:WizのCNAPPアプローチ
Wizは、コアとなるCNAPP機能を単一の統合されたプラットフォームに集約することで、オープンソースツールが残すセキュリティのギャップを埋めます。OSSツールは単体(サイロ)で動作することが多く、監視の盲点を生み出したり、ノイズの多いアラートを多発させたり、ワークフローを断片化させたりしがちです。Wizは、ソースコードからランタイムに至るまで、クラウドのすべてのレイヤーを統合することで、この断片化を根本から解消します。
WizはCSPM、CWPP、CIEM、AST、CDRを組み合わせることで、完全な可視性と一貫したセキュリティポリシーの適用を実現します。Wiz独自の「セキュリティグラフ」は、システム横断でリスクを関連付け、最も重要な問題のみをハイライトします。完全なコンテキストに裏付けられた、明確で重複のないアラートを提供するため、運用チームは迅速かつ確信を持って対応できるようになるのです。